それから一ヶ月が経過した。

リリティス様の記憶は戻らないままだが、表情も明るくなり、笑い声が聞こえるようになっていた。


リリティス様が笑うと、カルレイン様が笑い、ルシルも笑い、つられて僕も笑顔になる。


あの母までもが、こっそりと笑いを堪えてたりする。

笑顔って不思議だよね。人から人へ伝染するんだ。



「今日もカルレイン様が取次ぎもしないで部屋にはいってきたのよ。

それで、私が、注意をしたのよ。そしたらリリティス様がね・・・」


今日も、俺は、仕事の終わったルシルの部屋を訪ねている。

荒らされた部屋は、元のようにきちんと整理され、窓辺には花が飾られていた。


その花の匂いが、俺の鼻腔をくすぐって・・、

ちょっとしたことなんだけど、俺はまた一つ、ルシルを好きになってしまう。


俺が部屋を訪れると、ルシルは起こった出来事を、生き生きと報告してくれる。

俺は、それに、うんうん、ってただ耳を傾ける。


この穏やかな時間が、俺はかなり気に入ってるんだ。