・・いっそ、リリティス様一人のせいになってくれれば・・。
「マーズレン、リリティス様には会ったの?」
俺の心を見透かすような間合いでかけられた母の言葉に、俺は胸が締め付けられる思いがした。
「いえ・・。リリティス様は、塔に幽閉されたままで・・」
俺は、ぼそぼそと歯切れの悪い返事をした。
まったく俺って男は、なんて小さい人間なんだ!!
こんなくだらない考えを抱くなんて・・・、俺は、嫌悪感に包まれた。
と、俺が暗い顔をしたのに、母が気付いたのだろう。
多分、俺がルシルのことを考えていると思ったに違いない。
「ルシルならきっと大丈夫。あれは案外肝が据わっているから」
めったに私情を挟まない母が、そんなことを言うもんだから、俺は不覚にも涙が出そうになった。