「私ね、とっても恵まれていると思うの」
とうとつにルシルが言った言葉に、俺は少し面食らった。
・・恵まれてる?
俺は、ルシルの言葉の真意をすぐには理解できなかった。
貧乏な家に生まれて、兄弟の面倒を見させられて、今は敵国に連れてこられて。
しかも、母のいじめにだって、あってるはずなのに?
「恵まれて・・る?」
「ええ。
両親がそろってて、沢山の兄弟がいて、偶然マーズレンに出会って、リリティス様にお仕えできて。
一生来ることもなかったはずのノルバス国にも来れて、初めての経験が沢山!
今は、オルメ様っていう、侍女頭に、侍女としての仕事を教えていただいてるのよ」
ルシルは、それこそ本当に楽しそうに指を折って、いくつもの“恵まれた”内容を語った。


