ノルバス国は、俺が生まれ育った国で、周囲を山脈に囲まれた軍事大国だ。
気候も少し寒い土地で、作物もあまり実らないので、
他の国の人間から見れば、うらやましい国ではないらしい。
けど、俺にとっては、そこは何にも変えがたい故郷で、今回も無事に戻ってこれて、
ほっとした。
と、
「お帰りなさいませ、カルレイン様」
俺が決して頭の上がらない女性の声が聞こえた。
「ただいま、オルメ。カナンの王女を連れてきた。世話を頼む」
わかりました、と簡潔に答えて、彼女は、俺をちらりと見た。
その目は、
“ちゃんとカルレイン様のお役に立っているんでしょうね?”
と、暗に俺に訴えていて、俺は少しだけうつむいた。