彼女の茶色い瞳は、大量の涙で潤んでいて、おまけに鼻水の洪水で顔中ぐちゃぐちゃだ。
彼女はいつでも明るくて、そんなそぶりを見せないから、俺はちっとも気づかなかった。
「ごめん、ルシル。ノルバスに行くのが嫌なら、俺からカルレイン様にきちんと説明するから」
俺の言葉に、ルシルは首を横に振った。
「違うの。ごめん・・なさい。行くのを決めたのは私だもん。
けど・・・もう二度と、家族に会えないんだって思ったら、私・・」
彼女はしゃくりあげて、それ以上言葉を継げなかった。
俺は、思わず彼女を力いっぱい抱きしめた。
「俺が必ず君を守るから。だから泣くなよ」
昼間、ルシルの弟に誓ったのとまったく同じ言葉を、俺はルシルに囁いた。
けど今俺が口にした言葉は、あの時とまったく違っていて、
俺は男として、彼女を守ってあげたいと、真剣にそう思った。