俺1人…何も知らないで…過ごしたと思うと…悔しいー…。 ギュッと握る手ーー。 爪が皮膚に食い込むくらい握った。 「お袋…何で…謝るんだよ…」 「直樹…全部…全部…母さんが悪いの…」 「そんなんじゃ分かんねぇよ!」 怒鳴る俺に、お袋は崩れるように座った。 「来たの…」 「来た?」 “うん”と頷いて話を続けた。 「あの日のお昼過ぎ…愛ちゃんが…病院に来たの」 「あの日って…」 「愛ちゃんが事故に遭ったクリスマス…母さん…病院に来た愛ちゃんを…追い返したの…」 そう言って涙を流すお袋。