足のつかない海とは恐ろしいものです。

ライフジャケットがあるので沈みはしませんが、浮力と体重のバランスがあってないような気がして大人一人を支えきれるのか不安です。

実際、ライフジャケットは浮いているものの首は半分水につかりズボっと抜けでもしようものなら、私は海のもくずです。

必死の思いでバナナを目指してバタアシ。

泳げないものでバタアシくらいしかできませんが足を動かそうとするとライフジャケットのやつが邪魔をする。

やっとの思いでバナナにつかまるとジェットスキー上でアイドリングかましてた兄さんがにこやかに言いました。


「海の中にお魚、いますよ~。このあたりは熱帯魚たくさんいますからのぞいてみてくださ~い!」

熱帯魚、生で見たことありません。

ライフジャケットはしっかり両手で抱えつつ、身の安全を図るためにバナナから離れぬよう注意深く海の中を覗き込みました。

台風通過直後のせいかもやもやと砂ぼこりがひどく、じっと目を凝らすと・・・


黒い物体が多数こちらに向かってくるようです。


熱帯魚、熱帯魚、るんるん。


んー・・・

思ったよりでかい・・・


間近にやってきて確信。



これって・・・・




チヌ~!!


おそらく台風で潮の流れが変わったのでしょう。
黒鯛の大群のまっただなかに人間5人放り出されている!

近くでみる黒鯛の歯の鋭いこと。
感情の読めない目がこちらを伺っています。

黒鯛たちも突然やってきた未確認生命体(すなわち我ら)に興味津々。

こっちに向かって寄ってこようとします。


兄さん、話がちがーう!

海面からバナナに戻るのは足場がない分大変な労力を使いました。

帰りのボートで兄さん一言

「いつもはカクレクマノミとかいるんですけどね・・・・」


ファインディングニモですか・・・・

かくれっぱなしで発見不可能でしたことです。