「女子も頑張ってるな」


転がったボールを先生が拾って言った。



『…はい…』


「バスケ好きか?」


『…大好きです…』


「そうか。俺も大好きだ。高校になっても部活を続けるやつは、大変なこともあると思うけど、人生の中で大切なものを必ず見つけられるはずだから、頑張れよ。ほらっ」



パスされたボールはまっすぐに私の胸の中に飛び込んできた。





「宮ゴリ、相変わらず熱いね。ちょっとおやじ入ってるけどバスケ姿はかっこいいよね」


ドリブルの練習に生徒と一緒に入った先生の後姿を見ながら唯が言った。


おやじ…全然違うよ。


大人の男って言ってよ。


バスケ姿は最高だけど、バスケしてなくても十分かっこいいよ。


心の中で唯に返事をした。

 




…好きか? 俺も大好きだ…



先生の声が耳の中を繰り返す。


好きな人に『大好き』って言っちゃった。


私は、腕の中で先生からパスされたボールをいつまでも強く抱いていた。