もう、恥ずかしいったらないよ、母さん。

あたし、振り向きもせずに、どんどん歩いた。

でも気がつくと、百地がいつの間にかあたしを追い越して、前を歩いてた。

「なんか、俺、根来に行ってみたくなった」って、百地が急に振り向いて言った。

「何で、急に?」

「お前のお袋が、そんなに嫌ってるとこって、どんなとこだろうってさ、ちょっと見てみたくなった」

「嫌ってるって、母さんそう言ったの?

翔の両親は別に嫌ってないよ。正月には毎年帰省してるし。

あたしの親は結婚反対されて駆け落ちしたからじゃない?

そんな深い意味、ないと思うな」


「そうかな……」


百地の顔ははっきりと、それは違うと言っている。


母さん、いや、戸隠の家には何か秘密があるのかな?


あたしは、何となく、そんな風に感じ始めていた。