「ユタ、あんた、しつこいよ」

「えぇっ、僕、もしかして百地君に嫌われた?」

「かもね。

だいたい、何で職業に結びつけなきゃいけない訳?
もし、現代に忍者がいるとしたら、普通の職業に身を隠してるとか考えない訳?

その方が自然じゃない?」

「そっか、そう言えばそうだね。

夢子、頭いぃ」

「あんたの頭が固いのよ!」

「何か、ちょっと、イメージが固まってきました……」

「はぁ?」

「僕の小説の主人公のこと!」

「良かったじゃない」

「医者とか、科学者とか、ベンチャー企業の実業家とか、華やかな実績を残す成功者。

が、彼の本当の姿は、国家の為に秘密裏に情報を操作する……」


「何?」


「スパイ!」


「ユタ、あんた懲りないね」


ユタはヘヘっと笑うと、百地を追って校舎へ向かって駆け出した。