「それにしても、翔って、頭に血が上ると、回り見えなくなるのな?」


あんまり普通に百地が喋るから、あたし無防備に彼の話に乗っちゃった。


「うん。損な役回りだよね。

でも、それが翔のいいとこであり、それが翔のエネルギーの源なんだよ」


「うん、俺も、あいつのそういとこ、好きだな」


百地の言葉に、あたしの胸が熱くなる。

だって、翔の無鉄砲な正義感を、好きだ、なんて言ってくれる人なんてめったに居ないんだもん。

「六年時の、そのいじめられっ子のことも、翔は守り通したんだよ。

卒業式の時、『俺は親からのクレームが怖くて、いじめを咎めることができなかった。お前に救われた』ってさ、最後の最後で担任も翔に謝った。

でも、そんな大人の都合聞かされたって、翔の気持ちは収まらなかったと思うけどさ」