あたしとユタは、二人が走って列に戻るのを見送った。

近づいてきた半田先生に向かって、翔が大きく頭を下げるのが見えた。


あいつ、確かに〈他心通の術〉って言った。

あいつも、人の心が読める?

『百地心波』と同じように、超能力の持ち主なの?

それとも、忍術の一つとして、〈他心通の術〉を語っただけ?


あたしの頭の中は百地のことで一杯。

並んで歩くユタもしかり。

隣りでなんかブツブツ呟いてる。

考え事に集中すると、周りに意識がいかないのが私の悪い癖。

多分あたし、全く前なんて見ないで、ぼぉっと歩いてた。


昨日の交差点手前で、

「夢子、赤、止まれ」

って、あたしの行く手を遮ったのは、思いも寄らないユタの手で。


「あ、ありがと」


あたしを助けた、隣に立つ、小さな勇者に感謝を述べる。


翔と百地の言うように、ユタは三人目のナイトなのかもしれない、って思ったよ。