顔は見えないけど、声の調子から校長先生の薄笑いを浮かべた表情が見えるようだった。
「僕も、特別扱いを望んでいません。
記録を計るなら、一年全員の記録を測るべきだと思います」
「成る程、君達の意見は分かった。
だが、部活動に関しては、顧問に一任してるんでな。
さて、困ったな……」
「校長先生、半田先生は、記録を測らないなら退部だと……」
「ほう、そりゃまた厳しいな。
だがな、例年、一年には大会出場の権利はない。
そこのとこを曲げて、君に大会出場の機会を作ってくれた半田先生の気持ちも解らないではないだろう?」
「はい?」
「先生は、君に期待してるってことだ。
先生も人間だ。
その期待を裏切られたら、気分も害する。
君の退部の件は、私の想像するに半田先生の落胆の表れだな。
君が望むなら、私に免じて、その件は白紙に戻そう」
「わたしが望むなら?」
「先生、陸上部を辞めたら大会に出場できません!」
「百地君、良く分かってるね」
「そう、君達中学生は学校という枠の中でしか認められない。
それが現実だ」
「でも、学校は僕達を守る役目もある。
そうですよね?」
百地の声が、すかさず校長の言葉を受けて返した。
「そうだ。先生達もその狭間で揺れ動く。
人間だからね。
時に厳しく、教え導き、時に優しく、包み守る。
君達を育むためにな」
「先生、わたし、陸上部を続けたいです。
半田先生に執り成し、お願いします!」
「よし、良く言った。
あとは私が引き受けよう。
だが、大会の件は別だ。
もともと、例年、一年に大会出場の権利はない。
君達も同様、来年に向けて練習に励むことだな」
「はい、分かりました。ありがとうございます!」
時間にしたら、ほんの数分後、ドアが開いて、二人が出てきた。



