なんか、強制されたようで気分悪かったけど。

このまま会話が続かないのも不自然だし。

今後のことを考えると、こんな些細な事くらい従っておいた方が良いような気がした。

もう考える余裕もないし。

「じゃ、ユタ、ユタは毎日部活出るつもり?」

「まぁね、塾もあるから、そう長くはいれないけど、紫苑先輩の顔、毎日見たいしさ」

「動機が不純」

「そっかぁ、紫苑先輩、綺麗だもんな、色気はないけど」

「そうだね、でも、そこがまた魅力なんでしょ?」

「夢子、わかってんねぇ」

「あんた単純そうだもの」

「僕、超複雑な人間ですよ」

「どこが?」


なんか、不思議な気分だった。

ユタって呼んだだけで、高橋君との距離がすごく近くなったみたい。


今までにない感覚。

あたし、自分でも気付かないうちに笑ってた。


「夢子って、藤林さんや百地君といる時しか笑わないと思ってた。

いっつも、暗い顔して下向いてるしさ」

「えっ、そう?

あたし、そんなに暗いかな?」

「そんなことないって、分かったけどさ」

「……」

「じゃ、ここで。

僕、塾だから、駅前行かなくちゃ。また明日ね」


小走りに駆けてくユタの背中を見送った。

ちっこい癖に、ちゃっかり強引なとこ、あるんだな……