「百地くんと夢子って、恋人同士? になったの?」



放課後の文芸部、ユタが真面目な顔で聞いてきた。


「恋人って、大げさな……

ユタ、あんた何? あたしと百地の関係がそんなに気になる?」


「そりゃ、まぁ、今、噂の二人ですから……」


「噂って……、変な噂?」


「夢子は気付かない?

百地くんの夢子をみつめる、あの優しい眼差し。

男の僕だって、あんな風に見つめられたら変な気持ちになっちゃうかも」



「百地はそんないやらしい目であたしを見たりしてない!」



あたしの唇は、怒りでワナワナと震えていた。



「それに、いつも二人でいる時は、しっかり手を繋いでいるし」



それには、ちゃんと訳がある。


まだ、『他心通の術』を習得してない百地にとって、あたしと繋がっている時だけが、心の平安を得られるんだ。

でも確かに、思えば、最近、百地があたしに触れる機会が増えてるような気がする。

それだけ、百地の能力が強くなってきているということか……

弱音を吐かない、百地だけれど、きっと周囲の雑念を思いっきり拾って苦しい思いをしてるに違いないのだ。