「ユタ、話って何?」



あたしはちょっぴり不機嫌に声を低めた。


「何って、僕あれから一人で紫苑先輩の相手、大変だったんですよ。

紫苑先輩ったら、夢子と藤林さんの関係を根ほり葉ほり僕に聞くし。

学校での様子とか、趣味とか、家族構成とか、そんなこと僕だって知りませんよ!

何ですかあれは?

ここまで来ると、僕が思うに、藤林さんが紫苑先輩にとって特別な興味の対象としか思えませんよ!」


「そ、そうだね……」

「そうだねって、夢子、心当たりがあるんですか?」

「実は……」


と、こっそり耳打ちするように、ユタに紫苑先輩の告白のことを話した。


「うそ……信じられない……紫苑先輩がライバルなんて……」


ぬぬ、ライバル?

聞き捨てなら無い響き。

百地の言うように、ユタは翔に思いを寄せてるってこと?


「まぁ、翔はその気持ちに答えるつもりはないみたいだし。

あたしもだからって、紫苑先輩が嫌いって訳じゃないし。

いつも通りでいいんじゃない?」

「夢子って、他人のことには余裕ですね」

「そ、そお?」

「まっ、いいですけど、僕は男だし、幾分有利な立場にいるわけだし……」

「そ、そうだよ、ユタ、頑張って!」

「何を、ですか?」と、睨んだユタの目はマジだった。






嗚呼、何も変わらない。

なんか、そんなユタとのやり取りもあたしにとっては嬉しかった。