ママは、あたし達が立っている門代わりの大きな鳥居に対峙する御殿の縁の下で、ピタリと足を止めた。

恭しくこちらに向き直り、胸の前で手を合わせたまま、腰から上の上半身を水平に頭を垂れた。



「巫女様、宴の用意が整いました。御召しかえを……」



その言葉と同時に、何処からともなく現れたママと同じような白装束の女性に両脇から腕を捕まれ、屋敷の中へと誘われた。

有無を言わさぬ強引さだ。

振り返ると百地と翔はあたしと反対方向へ、黒装束の男達に付き添われ、進んで行く姿が目に映った。



『あたし、どうなっちゃうの……』



傍にママがいるというだけが唯一の安心材料で、他の全てが霧に包まれたように釈然としない。



『夢子、自然体で、怖がらなくていい、成る様に成る』



百地の落ち着いた声を心に受け止め、あたしは覚悟を決めた。


そう、これはもう決まっていたことなのだ。

どうあがいても、運命は変えられない。

この運命をどう受け止めるかが、これからのあたし達に課せられた試練なんだ。