何だ、何にも知らずに、ノホホンと暮らしていたのは、あたしだけってこと?



巫女の呪いとか、自分の使命とか、そんな胡散臭い話、あたしだけが面識ない初心者ってことなんだ。

自然と口が尖ってくる。


「夢子はそれでいいんだよ。

夢子は純真なまま、無垢のままいることが大切なんだ」


あたしの心を見透かしたように、翔があたしに笑いかけてきた。

翔が、あたしの心を覗く術を持ってる筈はないけれど、あたしの表情からそれを汲み取ってくれているのが分かる。


「俺はこれからも夢子を守る」


そう言ってあたしを見た翔の顔には、硬い決意が表れていた。


「一年先か、いや、もっと早いか、遅いか。

だが確実に、百地が夢子から離れる時が来る。

そして、百地の修行が一年かかるか、二年かかるか……」


「うん……」


あたしは、自分を納得させるように静かに頷いた。


「今、俺達はまだ十二、いや十三だ。まだ先は長い。

長達が言ったように、まだ時は満ちていない。

これから先、何が起こるかもわからない。

だから、夢子、夢子が夢子で居ることが大切なんだ。その為に俺がいる」


「そうだな、今思い悩んでも仕方ない。自然体でいることが得策だ」

「そう、気負いは禁物。時が来れば、成る様に成る」


翔と百地は、そんなやり取りの後、顔を見合わせて笑った。