「親父から聞いたんだけどさ、風さんは、誠一さんが事故で早くに死んでしまうことも、夢で見て知ってたんだって。

それでも誠一さんが好きで離れたくなくて、最後まで一緒にいてしまったんだって」


「良かった、パパが死んだのが巫女の呪いのせいじゃなくて……

じゃ、恐ろしいことって……」


「じいちゃんの思い込みも多分にあるよ、懍さんのことがあるからさ」

「……」

「だから、夢子は夢子で考えればいい。運命なんて言葉に縛られるのは夢子らしくない」


投げられた言葉は、どれもとても優しくて、あたしの苦しみを癒していった。


「おっ、着いたぞ」


小路を登り切ると、そこに広がっていたのは、山の中腹に作られた段々畑だった。

細く切り出された畑には、其々に色んな野菜が植えられていた。

茄子、胡瓜、人参、トマト、蕪……

翔は慣れた手付きで、頃合い良く育った実を、一つ一つ吟味しながら収穫し、籠へと入れていく。

その都度、地面にしゃがみ込み、株の周りに生えた雑草を無造作に引っこ抜く。


「夢子も、ほら、そこら辺に生えてる雑草、抜いといて」


翔に促され、翔の後に付いて、あたしも野菜の株の周りの雑草を抜き取っていった。