夕方、佐藤さんに連れられて別荘に戻ったあたし達は、明日からの合宿についての決断を迫られていた。

「紫苑の言うように、半ば強引にみんなを連れてきて、夢子ちゃんにこうたて続きに災難が降りかかるってことは、やっぱり方角が悪かったのかな?」

小太郎先生が難しい顔で、尤もらしく、結論を述べた。


「夢子に水難の相が出てるって、可能性もあるけど」

と、紫苑先輩がそれに追い討ちをかける。


「こんなに良くしていただいて、確かに災難には会ったけど、入り江も温泉も、あたしはとっても楽しかったので、方角が悪かったとか、水難の相とか、そういうことでこの合宿が否定されちゃうのが悲しいんですけど、なんとなく、東京に戻った方がいいかなって」

まとまらない思いを徒然に述べて、それでもあたしの思いがここにないのは明らかで。

早く、一刻も早く、根来へ行かなければならない。

あたしの心は既に根来へ飛んでいた。


「ほんとにごめんなさい。小太郎先生、佐藤さん、そして紫苑先輩、お世話になりました」


あたしは、精一杯の感謝の気持ちを込めて、深々と頭を下げた。