多分、百地心波から送られて来たエネルギーは想像以上に強いもので、百地一人では上手く受け取ることができなかったのだと思う。

あたしという抵抗を加えることで、上手くチューニングされ、声となってあたし達二人に届いたのだ。


それからの百地はあたしと手を繋いで歩きながらも、心は上の空で、何か難しい顔をして放心しているようだった。

多分、百地は心波から送られてくるメッセージを一言も聞き漏らしまいと、神経を集中させていたんだと思う。

そして、あたしはと言うと、それ以降、心波の声はあたしにまでは届かなくて、でも、そんな事が少しも気にならないくらい、心の中が懐かしい思いで満たされていたんだ。


それが何故かはわからなかったけど。


そう……、思い返せば、この時が、

これから起こる、

全ての『こと』の始まりだったんだ。