『何? この音は?』


あたしは怯えて問いかけた。


『分からない……

けど……、耳が、い・た・い』


いつものように、何事にも動じない、強気な百地の答えを期待したあたしの心に、思いがけない気弱な悲鳴が響いた。

あたしは、咄嗟に百地の手を取った。

途端に、聞こえてきた、はっきりとした呼び声。



『しのぶ、ねごろへもどれ……

つたえなくてはならないことがある……』



この声の主は誰?



『あなたは、だれ?』



『わしは、ももちしんぱ……

おまえたちがめざめるのをまっていた……』



百地と二人、驚きを隠せず見詰め合った。

百地心波が百地を、そしてあたしを呼んでいる?


「じっちゃん、生きてたんだ……

こりゃ、どうにも根来へ行かなくちゃならねぇな」


さっきとは打って変わった落ち着いた百地の声が聞こえた。

あたしと繋がることで、耳に届いた百地心波からのメッセージ。

そうと分かれば、別段怖いものでもない。

必然と興奮。

百地の顔に笑顔が戻った。