「あっ、あたしもそう思います。

昨日も、この入り江に来た時、紫苑先輩泣いてるように見えたんですけど、多分、それをみんなに悟られまいとして水に潜ってしまって……」


「この入り江は母親との思い出の場所だからな」


「でも、ユタもあたしもわかってました。

だから、この合宿を楽しくしようねって話してたのに。

それなのに、あたしったら、こんな失態……」


「いいんだよ、むしろ良かった。

今日のハプニングで紫苑の気持ちも吹っ切れたんじゃないかな。

夢子ちゃんが溺れかかった入り江ってことで、思い出は塗り替えられる」


「そう思っていただけるなら、あたしもちょっぴり気が楽です」


紫苑先輩を優しくいたわる、父としての小太郎先生に胸が熱くなった。