「あははっ…面白いこと言うね」


 そう言った乃亜の目は冷めきっていた。

 これが本当にあの乃亜なのか…?


「お姉ちゃんはね…あたしのために自分が我慢するように生きてきたんだよ?
 そうゆう風に育てられたの」

「……」


 どうゆう意味だ?

 美華がそうゆう風に育てられてきたって…。

 だから美華はあんなに簡単に?

 ただの姉妹なのに…?


「斗真、あたしと付き合って。
 そしたらまた…お姉ちゃんと喋れるんだよ」


 美華はきっと、俺とは喋らない。

 関わらないと…そう言ったんだから。

 けど、乃亜と…付き合えば。

 そしたらまた、美華は笑ってくれるのか?

 俺に言葉をかけてくれる?

 また…名前を、呼んでくれる?

 目の前で美華が笑う。


『斗真くん』


 もう…きっと、見れない笑顔。

 乃亜の腕が首に巻き付く。

 美華と同じ花の香りのシャンプー。

 けど明らかに柔らかさが違う。

 美華はもっと柔らかくて暖かくて…日溜まりの、ようで


「……っ」


 そうじゃ、ないだろ。

 乃亜を突き放す。


「っ…斗真!?」

「お前、美華のこと全然わかってねぇんだな」