あー…タバコ吸いてぇ。

 吸ったら、このモヤモヤもなくなんのかな。

 …タバコなんて、吸ったら姉貴に殺されっけど。

 俺って、案外そーゆーとこマジメだから。

―ギィ…ッ

 古びた音が響き、背中でそれを受け取る。


「…斗真、」

「…よう、」


 ゆっくり立ち上がって振り返る。

 そして、その女を睨んだ。


「何か…用?」

「…言わなくてもわかってんだろ?
 ――…乃亜」


 びくりと震えた身体。

 やっぱな…美華がああなったのはコイツのせいだ。


「乃亜の気持ちに答えてあげて」


 美華はそう言った。

 噂に疎くて鈍感な美華が気付くはずない、そしたら理由はたった1つ。

 ――本人に言われたから、だ。


「斗真は…本当にお姉ちゃんのことが好きなんだね」

「……」

「あたし見たんだよ、お姉ちゃんと斗真が裏庭で喋ってたの。
 斗真のあんな顔初めて見た」


 裏庭…俺と美華が?

 そんなとこ……あ、もしかして美華が告られたときの…?

 大分前じゃねぇか。


「だからこそ…お姉ちゃんにだけは渡さない!」

「っ…お前、」