「乃亜は本気で斗真くんのこと好きなの。
 今でも好きなの。
 乃亜と別れたのって、あたしがあまりにもダサかったからでしょ?
 もう大丈夫だから、乃亜のところに…」

「美華!!!!
 …いい加減にしねぇと、さすがに怒るぜ?」


 すでにキレかかってっけど。

 キロッと睨む。

 いつもはびくびくしてるくせに全く怯まない。


「乃亜の気持ちに答えてあげてよ。
 乃亜は斗真くんに釣り合いたいからって…」

「俺と乃亜はもう関係ねぇんだよ!!
 だいたい俺の気持ちはどうなんだよ!?」

「…ッ」


 俺は、美華が好きなのに。

 この気持ちを伝えれば、お前はわかってくれるのか?

 それに、最初から決めていたなら何で…。


「…ごめんね、ありがとう。
 最後に楽しい思い出が出来て、嬉しかった」


 悲しい笑みを浮かべる美華。

 嫌だ、そんな顔してほしくないんだ。

 だんだん遠ざかっていく大好きなあいつの背中。

 追いかけたくても足が動かなくて

 ただ眺めることしか出来なかった。

 これがお前が出した答えなら

 俺は…

 ――頬を伝う雫が海に溶けた。

 砂浜に書いた2人の名前は

 いつの間にか波にさらわれていた。

 俺の、恋心と一緒に…