イチ*コイ




 まあ、すげーたまにだけど。

 記憶力良くなかったら留年してんだろーな。


「じゃあ、進路どうするの?」

「進学だけど」

「えっ!?」


 パッと振り返って俺を見る。

 相変わらずの間抜け面だな…。


「何だよその驚きよう」

「ご、ごめん…っ。
 えと、何かなりたい職業でもあるの?」

「おう」

「聞いてもいい…?」


 おそるおそる聞いてきた美華に笑う。

 こいつ、変なとこで気ぃ使うんだよな。

 もう慣れたけど。


「俺、建築デザイナーになりてぇんだよ」

「すご…かっこいい!」

「小さいときからの夢だったんだ」


 て、何でこんなことまで言ってんだよ。

 わざわざ言わなくてよかったのに…はずっ。


「斗真くんならなれるよ、きっと」

「…おう」


 そう言ってふわりと笑う美華。

 何だか照れ臭くて、それ以上言えなかった。

 こんなこと言ったの初めてで、どうすればいいのかわからない。


「お前は進路どうすんの?」

「あ…あたしは、専門学校に行く予定、なんだけど」

「なりたいもんあるとか?」

「うん…」