「美華」

「ん?…っ、何?」


 飲み込んでから俺を見上げる。

 あの日のように何も知らない透き通った目。

 ――もっと俺を、知れ。


「お前のこと、教えろよ」

――俺のことも、話してやるから。







 冷えていくオムカレーをつつきながら、お互いのことを話した。

 美華は妹だけじゃなくって、兄貴もいる

 3人兄妹の真ん中だった。

 他にも得意科目は国語だったり、体育が苦手だったり。

 色は白とか青が好きで、ケータイも白なこと。

 意外な共通点も見つけた。

 緩やかに流れるレコードのように、俺たちの空気は穏やかだった。

 ――このとき、お互い重要なことに気付いていれば

 俺たちはもっと一緒にいれたのかもしれない。

 伏線はたくさん張られていたのに

 気付かなかった俺が、バカだった。