確か前は『私』だった気がする。


「お前、一人称変わったよな?」

「え、あ…えと、それはっ」


 何故か焦ってる美華を見ながら出された水を飲む。

 あー生き返る。

 …つかこいつ、顔赤くねぇ?


「おい…」

「あの…慣れてきた、から。
 その…少しは素出せるようになった、ってゆぅか…」


 は…んじゃこいつは、今まで

 素じゃなかったっつーこと?

 けどやっと、お前は俺に本当の自分を見せ始めたのか…?


「今まで、梢にしか素出せなかったけど、でも斗真くんと仲良くなれて…
 もっと人のこと信じよう、って思ったんだ。
 ありがとう…」


 少し微笑んで俯く。

 もうコイツの癖だってことくらい、わかる。

 でも美華と過ごした期間なんて、たった1、2ヶ月なんだよな。

 まだまだコイツの知らないとこがある。

 まだまだ俺のこと、知ってねぇ。


「美華」

「っ、な、何…?」

「お前もオムカレーな!」

「えぇ!?」


 ベルを押して、勝手に2つ頼む。

 向かいで焦る美華を黙らせて、何となく清々しくなって笑った。

 その途端、美華があのマヌケ顔を披露する。


「何だよ?」

「そんな風に…笑うんだね、」

「は?」