「オイ」

「ひゃあ!お、大森くん!?」


 隣を歩く美華を突っついた。

 予想外だったのか、涙目になってる。


「ク…ッ驚きすぎだろ…!」

「だ、だって…危ないよ」

「あ、」


 美華の隣は、急斜面の崖。

 そ、今は遠足中ってわけだ。

 この年になってまで遠足なんて行くモンじゃねぇだろ…。

 毎年憂鬱な今日と、今は違う。

 出席番号が同じだから、俺の隣は美華。

 今年は楽しめる…だろう。


「気を付けてね、ほんと…怖いから」

「…おう」


 それから美華を観察。

 登りの中盤まで来た頃、話しかけた。


「お前高所恐怖症?」

「!…あ、えっと…」


 急に慌て出す美華。

 俺の勘は基本的に外れねぇ。


「だろ?」

「…ハイ」


 肩を落とす姿はやっぱおもしれえ。

 他の女みてぇにそれ理由にして近づこうとしねぇし。


「ふっ…やっぱな」

「何でわかったの…?」


 不思議そうに見上げてくるその目。

 何かこの顔見ると、いじめたくなるんだよなぁ…。