「だから何?
 お前は本気で思えば本気で思ってもらえるって信じとけばいい。
 けどそれを俺に押し付けんな」


 細い肩を掴んで力を入れる。

 苦しそうに眉が寄る美華の顔。


「いくら本気でも、受け入れられねーこともあんだよ」


 ボロボロに泣き崩れた姿が思い浮かぶ。

 本気で恋して、本気で変わったんだ…。


「あるところに、太った女の子がいました」

「…、大森くん?」

「その女の子は恋をし、好きな人のために綺麗になりました。
 誰もが羨む美貌を手にしたその女の子は告白しました。
 そして2人は付き合うことになりました」


 これは例え話でも、作り物でもない。

 現実にあった話だ。

 俺の、ごく身近で。


「どうだ、モテたら『好きな人』にも好かれんだよ」


 これが、現実なんだ。

 それからそいつは、『人は見た目』と言い続けた。

 だから綺麗にならなくてはいけない、ってな。


「……」


 何も言えなくなった美華が俯く。