「おい…あんな子、いたか…?」

「は…?クラス間違えてんじゃね?」


 下を向いているせいか、そんなリアクションしかない。

 一歩一歩こっちに近づいてくるそいつに、周りが固まる。


「もしかして…」


 そんな顔を、して。


「は…誰、あんた」


 美華の机に座ってる女が言う。

 他の奴等も美華をジロジロ見る。


「ぁの…っ、どいて下、さぃ…っ」

「はぁ?何か言ったぁ?」

「聞こえないんだけどー!」


 バカにする視線を受けてさらに下を向く。

 …はぁ、仕方ねぇな…。


「どけよ、ジャマ」

「なっ!斗真!?」


 …誰が納斗真だっつの…。

 そんな思いも込めて、睨む。


「…っ、」

「九条、座れよ」

「あっ、うん…」


 睨んだからか、女たちは文句を言いながら去っていった。

 つか香水くせぇンだよ、殺す気か。

 …あ、美華の香水も用意しねぇとな…。


「ありがと、大森くんっ」


 ふわっと笑う美華。

 …瀬莉(セリ)さんに頼むか。