イチ*コイ




 最後のLHRも、視界に入れられなくて俯いていた。

 そして、未練を無くすために打ち上げを断ってあの海に来た。

 ここで2回、美華と別れた。

 今度は本当に終わりなんだ…。

 県外だったらどうしようもねぇ。

 …諦めるしか、ない。


「……ふぅ」


 俺に、諦められるのか…?

 あんなにイイ女なんて、もういないだろうに。

 真新しいケータイを握り締める。

―ザ…ッ

 砂浜を歩く音。

 そして…


「…斗真?」


 …アイツが、いた。

 久しぶりに見ると、どこか変わっている気がした。


「…乃亜、何で…」

「思い出の場所だから…かな」

「…そうか」


 そう言えば、乃亜とも2回来た。

 皮肉だよな…同じ場所にくるなんて。

 自分がそうしたんだけど。

 海は、いつでもあるから。

 どんなことをしたって、俺を受け止めてくれる。

 ああ…美華は海に似てたんだ。

 どこにでもあるけど、それぞれ違う。

 いろんな感情を教えてくれる。


「斗真は…未練を無くすために、来たの?」

「…ああ」