大森 斗真 17歳――高3


「ねぇ斗真ぁ〜今日遊ぼうよ」

「あぁ、わり…今日約束あるんだ」


 そう言いながら何も入ってない鞄を掴む。


「えぇ?昨日明日って言ったのにぃ…」

「彼女は優先しなきゃだろ?
 じゃあまたな」


 軽いリップ音をたてて、こめかみから唇を離す。

 それだけで機嫌が直る、猫なで声の女。


「今度絶対ね?」


 適当に手を振って教室を出た。

 “彼女”の教室は隣の隣。

 けど女待たせるわけにはいかねぇし。

 俺は大股で足を進めた。


「あ、斗真!」

「…乃亜(ノア)」


 駆け寄ってきた乃亜を見て、小さくため息を吐いた。

 これでわざわざ行かなくてすむ。

――九条 乃亜

 一応俺の、今の彼女。


「ごめん、ちょっと図書室寄っていい?」

「お前本なんて読むの?」


 にやりと笑う。

 乃亜が本読んでるとこなんて見たことねぇし。


「ひっど!仕方ないじゃん、調べ物押し付けられたんだから〜」

「はぁ、さっさと行って帰ろうぜ」