イチ*コイ




 顔にかかる柔らかい髪がくすぐったかった。

 けど、美華から匂うシャンプーの花の香りが心地よかった。


「は、離して…」

「いやだ」

「だって…っ」


 また、乃亜か?

 乃亜からも守る。

 何からだって守ってやるよ…。

 お前だけを守りたいんだ。


「……同情じゃ、ないの?」

「は?」


 腕の力を緩めて顔を覗き込む。

 何言ってんだこのバカは。

 美華の目は潤んでいて、俺を見上げていた。

 …上目遣いっ!


「…っ」

「いろいろあったからって…同情してるんじゃないの?」

「バーカッ!俺が同情なんかするかっ!
 俺はな、どうしようもないくらい、お前が好きなんだよ!!!!」


 言い終わって息を吐いた瞬間、固まった。

 今日固まるの多いな…なんて考えた。

 いやいや…違うだろ。

 至近距離で香るシャンプーの花の匂い。

 ――俺は美華に抱き着かれていた。


「は……え、?」

「っ…ほんと、に……?」

「あ、ああ…」


 何だこの状況は…!?

 美華が俺に抱き付いてくるとかレアすぎるだろっ!