イチ*コイ




 タッパがあって運動神経が良かった俺はすぐ使われた。

 それで目立って女にモテるようになった。

 けど2年のとき、キャプテンの惚れた女と遊んだのが原因で追い出された。

 ま、そのあとチームはぼろ負けしてたけど俺の知ったことじゃねぇし。

 …バスケは、なんだかんかだで好きだった。

 第1クォーターの10分間の中の、さらにその15秒間の戦い。

 ギリギリで今を生きてる感覚にハマった。

 …やめさせられて、どーでもよくなったけど。

 やっぱバスケは好きだ。


「斗真ーっ!!」

「頑張ってーっ!!」


 耳障りな甲高い声はいらない。

 俺が欲しいのは、たった1人で。

 フェイントをかけてボールを放つ。

 良い音を出してまた点が入る。

 なあ…お前は俺のこと、見てるか?

 ぶっちゃけこんなに必死になってんのはお前に見てもらいたいからなんだけど。

 こんなこと口が裂けても言わねぇし。

 だから…さ、なんとなくでいい。

 俺の気持ちに気付いて。

 少しでいいから、笑えよ。

 ディフェンスにまわる為に向きを変える。