他人なんかどーでもよくてキョーミなんかなかった。

 けど、お前と喋ってすぐさ…

 おもしれぇ、って思ったんだ。

 初めて抱く感情だからどうすればいいのかわからなかった。

 けど美華と喋るたびにさ

 歯車が回るように、前に進んでいったんだ。

 俺、お前の過去のこととか知らねぇよ?

 けど、今のお前のことは知ってる。

 ただの大人しいクソ真面目な奴だと思った。

 でも本当のお前は意地っ張りで、人の感情に敏感で

 どこにでも居そうな奴、から

 どこにも居ない奴、に変わったんだ。

 どこか似ているようで、確実に違って

 それはお前が真っ直ぐに生きてきた証拠。

 少しずつでいい、お前に近付きたいんだ。

 美華を、守りたいんだ…。


「――本気の女の子を掴まえるためには頭を使え」


 頭をボールペンでつつきながら徳永が言う。

 頭、か…。


「押すだけじゃだめだぞ?
 ときには引くことも肝心だ」

「…おう」

「あとはまあ、正直に自分の気持ち伝えればいい。
 慎重にな」