「んだよ…」


 ふあ、とデカい欠伸をかます。


「問7を今欠伸した大森!」

「…は?」

「あぁ〜…だから起きてって言ったのに…」


 寝ぼけたまま、テカったデコ(つーか頭?)を眺めた。

 意味わかんねー数式。


「知らねー」

「大森くん…!!」


 だって知らねーもんは知らねーし。

 あ、こいつに解かせればいいんじゃね?


「おい美華、答え何?」

「えぇ!?知らないよ!」

「知らねーじゃねぇよ、10秒で計算しろ」

「えぇ!?」


 いーち…にーい…さーん…

 ガリガリ問題を解く美華を笑いながら見る。

 途中までやってたみたいだしな。


「きゅーう…じゅ」

「χ=±3!?」

「χ=±3…?」

「…よし、次ー…」


 ぐだーと突っ伏す美華。

 ウケるよなぁ…こいつ。


「顔上げろ。ほらゴホービ」

「え??」


―ビシッ


「ぅっ」


 俺の消ゴムがデコにヒット。


「ふ、だっせ…」

「〜〜〜ッ!」


 何だかんだで、変わらない日常が変わっていく。

 そんなことをノーテンキに考えていた俺は気付かない。

 これが、一生忘れられない恋の始まりになると…。