「唯、唯……」



額にひんやりとした感覚を感じて、ゆっくり瞼を開ける。

そこには、心配そうに私を覗き込むお兄ちゃんが居た。




「お兄ちゃん……私……」

「のぼせたみたいだな。突然気を失ったからびっくりした」

「ごめん……。おばあちゃんとかには見つからなかった?」

「ああ、だから心配すんな。気分はどうだ?」



まだ少し頭がボーっとする感じはあるものの、それ以外に頭痛があるとか吐き気があるなんていう事はない。




「平気だよ。ありがと。それより今何時?」


「ん?今は……2時過ぎだな」



時計を確認したお兄ちゃんが、時間を教えてくれる。

お風呂に入ったのが11時過ぎ。2時って事は結構気を失ってた計算になる……




「なんか勿体ない事しちゃったなぁ……」

「唯?」



私はゆっくりと上半身を起こすと、お兄ちゃんに抱きつく。

お兄ちゃんと居られる時間はもうそんなに残ってないから……




「お兄ちゃん、しよっか……」

「体は?辛くないのか……?」

「うん。ただ、もう少しだけこのまま」




何となくだけど、私が寝て起きたらお兄ちゃんはもういなくなってる気がした……

そしてその日が来るまでに、またこうやってゆっくり会える時があるのかも解らない。


もしかしたららこんな風に抱きあえるのは最後かもしれない……




どこかにそんな不安を感じながら、それを押し込めるようにお兄ちゃんに抱きつく力を強めた。