目の前には、お星さまとピヨコがクルクルと円を描きながら駆け巡っていた。


この感覚は、失神寸前の無の境地。


一度体験しているから、すぐにわかる。


「お、おい! 大丈夫か?」


パタパタと近づく足音。担任とは違う低い声。


そうか、こいつが犯人か。


ボインな女の子を傷付けやがって、大翔に言いつけてやるんだから。


「きっさま……ドキドキハラハラ胸一杯の女子高生に、いきなり洗礼とはいい度胸して―――」


「危ない!」


今度は女の子の高い声。


だけど切羽詰まったような叫び声で、顔を押えていた手をどかすと、犯人らしき男の後頭部が視覚に入る。


と、その視覚から頭が消えて、代わりに花瓶が跳んできてって……うわぁぁぁ!?