扉の取っ手に手を伸ばす。


が、それを握ることができない。


なにビビッてんだよ俺。しっかりしろよ俺。


ここは正真正銘、俺の家じゃないか。


息子が帰ってきてなにが悪い。朝帰りだけど、ちょっと詮索されるだけだ。


自身に喝を入れて、感情を高ぶらせる。


こうでもしなきゃ、この扉を開けることは出来ないでいた。


心のどこかで、大翔の言葉が引っ掛かっているのは確かだ。


心の迷いが、扉を開けるのを迷わせる。


開けなきゃ前には進めない。開けるんだ、開けるんだ、開けるんだ!


勢いで開けちまえ作戦。


感情をMAXまで高めて、迷いを打ち消す。