俺のことを知る人は、この世にいない。 言い換えれば、俺はこの世に存在しないということ。 ―――そんなはずはない。 俺は今こうして存在しているんだ。 意識もあるし自我もある。 五体満足で健康な体もある。 喜んだり怒ったり哀しんだり楽しんだり、感情もきちんとある。 家族もいるし親戚もいる。 友達もちょっと苦手な奴も秘かに想っている人もいる。 なのに、俺は存在しない? そんなわけあるか。こんなことがあってたまるか。 俺は十五年間、男として生きてきたんだ。