女での生活が板についてしまったせいか、未だに男物の服は、なんだか違和感があって変な感じ。


全身鏡で姿をチェックしていると、ケータイのバイブ音が鳴り響いた。


ヤバイ、待ち合わせてしてたんだっけ。


ケータイの画面隅に表示されている時計を確認すると、待ち合わせ時間を三十分も過ぎていた。


恐る恐る電話にでる。


「も、もしもし?」


「マルチーズって犬可愛いよね。もうじきお昼だけど、マルチーズフォンデュ食べたい?」


「マルチーズに罪はありません!」


全速力で向かいます。


ダジャレと本気が交じった声にそう言い訳し、急いで家を飛び出した。


男に戻っても、弟には敵わないな。うん。


肩を竦めて苦笑い。


我が儘っぷりは、今なおご健在のようだ。






【完】