いやいやいや、あれは脅されたからしょうがなくやっただけだって。
「逃げようと思えばいつだって逃げれたはずだよ。それどころか毎日が楽しそうでさ、笑っちゃうよ」
そうだった。この子は千里眼を使えるんだ。
いまさら隠しても意味はない。俺も、俺の気持ちを大翔に本気でぶつけてみよう。
お姉ちゃんとして家族として暮らしてきたんだ。多少なりとも、口を挟む権利だって俺にはある。
「初めて大翔のマンションに来た時から、違和感があったんだ。生活感がないというか、子供一人であんな高級マンションに住めるわけないし。
だから、この子には何かあるって感じたんだ。心に秘めた何かが……てな」
言ってる途中で照れ臭くなって、口の端から舌を少しのぞかした。
おどけてみた所で、大翔は俺に背を向けたままだから効果は0なのだけど。
「ホント馬鹿だよね。自分のことより僕なんかのこと心配しちゃってさ」
なあ大翔、今の言葉は俺に向けたもの? それとも家族に向けたもの?
俺の心を読みとったのか、驚いた様子でこちらに身体を移す。


