悔しくて情けなくて悲しくて、俺の頬にひんやりしたものが伝った。
もう、口を閉ざしているのも限界……。
ードスッー
……ドスッ?
なにやら鈍い音がしたと思ったら、ゆっくりと唇が離れた。
翼の表情には苦悶の色がしっかりと染み付いている。
ギーとベッドのスプリングが軋む音を奏でながら、俺を見下ろす形で膝立ちになった。
が突然、翼の身体の色素が薄くなり、透明になっていく。
最終的には翼は消え、そこには宙に浮いた一本のナイフだけが残っていた。
「出来損ないは排除するのみ」
低くどこか幼い声が静まり返った病室に響く。
扉の前には鬼のような形相をした大翔が仁王立ちしており、指を鳴らすと浮いていたナイフが乱れたシーツにポトリと落ちた。


