集中力があるというか『これをやる』と決めたら一直線に突き進むイノシシタイプだ。


大翔の長所でもあり、短所でもあるんだけど。


だから今日もそんな感じだろうと思っていたんだ。


思っていたんだけど……。


「大事な話がある」


声色も低く、いつになく真剣な表情で見上げる大翔に危惧を覚えた。


裾を掴む手も、微かに震えている。


脳裏を過ぎったのは、学校の教室で見せた大翔の憂いを帯びたあの顔。


瞳は潤んでいないが、視点が定まらず縦横無尽に視線を巡らしている。


「あのねお姉ちゃん、驚かないでね」


緊迫した空気が流れる。


背筋に悪寒が走り、喉を鳴らした。