帰り道。落ち込んでいる俺は、地面を眺めながら亡霊の如く街中を徘徊している。


大翔になんて説明しよう。


実はほんの少しだけ、ミクロくらいのちっちゃさだけど、心の片隅では受かりと思っていた。


タレントに興味がないことは事実。受かりたいと思ったのは、俺が原因ではない。


大翔だ。


このオーディションが鍵だったんだ。


厳重に固く閉ざされた心の扉を開けられる鍵。


深い深い深海に眠っていた鍵が浮上したというのに、俺はみすみす取り損ねてしまったのだ。


このオーディションがキーポイントだったのに。


二次審査に進めれば、大翔のことが少しでも分かったのかも知れなかったのに。



情けない。本当に情けない。