しっかり自分をアピールしろと、大翔は力説した。


その頃には、いつもの大翔に戻っていた。


切り替えの早さは、俺に負けずと劣らない。


あれやこれやとアピール方法を考える大翔を横目に、車窓に肘をつく形で頬杖をし、流れ行く景色を眺めた。


ちょうど夕暮れ時で、海岸近くの町並みは紅く染まり、地平線に太陽が沈む光景にどことなく憂いを感じる。


大翔と初めて出会った時も、この日のような夕暮れだった。


あの日から、堪えず己の中で続く疑問。


―なぜ俺をお姉ちゃんにしたのか?―


触れてはいけない、越えてはいけない疑問が、今なら言えるような気がする。


軽くさらっと言ってしまおうか。ゆっくり慎重に言ってしまおうか。


だけど臆病な俺は、たったその一言を口に出来ない。


大翔を傷つけてしまうかも知れない。