空気が張り詰め、ピリピリとしたムードが俺と大翔を包み込む。


「大人になんか、なれないよ……」


ほとんど吐息に近い呟きを、地獄耳の俺は聞き落とさなかった。


声だけでなく、存在そのものが消え入りそうなほど、覇気がなくなり小さく見えた。


なんなんだよ。マジでなんなんだよ。


いつもならキツイことを言ってもケロッとしている大翔が、俺の一言でここまで落ち込むなんて。


あの一言に、地雷なんて存在していたのだろうか?


いや、あったんだ。


大翔が落ち込むほどの何かが―――


拳を強く握りしめ、今にも泣き出しそうな大翔にかける言葉が見つからない。


時が流れてくれれば、なにかの拍子に突破口が見いだせられるが、無情にも魔法によって時が進むことはない。


俺達の時も止まっているかのような錯覚に陥っていると、グッとカカトで指先を踏み付けられた。