マンションから学校までは割りと近くて、川沿いの通学路を二十分ほど歩けばすぐに着く。


今日は珍しく早く出たため、通学路には俺以外の人影は無い。


爽やかな朝の陽射しとチュンチュンと小鳥のさえずりが、俺の心を安らげ癒す。


この川の水質は都会にしては良い方で、透明度が高く、小魚が水面を飛び跳ねる。


小魚を狙った鷺や白鳥が、川から突き出た岩肌に純白の羽を休めていた。


白鳥がこの時期にいるわけないだろう! と突っ込んではいけない。


いるもんはいるのだ。現実なのだから仕方がない。


現実という枠に収まってはいけない。


世の中には非現実的な事象も起こりえるのだ。


昔懐かしいアゴヒゲアザラシのタマちゃんが良い例だ。


川にアザラシ、しかも個体数が少なく珍しいアゴヒゲアザラシが住み着くとは誰も予想だにしていなかったはずだ。


常識に囚われていたら、予期せぬ現象に直面した時、冷静な判断を欠くことになる。